認知症ケア専門士の資格を持っている僕が、試験内容や給料事例を紹介
公開日:
介護の仕事
認知症への理解や対応って大変ですよね
「◯◯さん!立っちゃダメ!」
「もう夜中ですよ。早く寝てください。」
介護の現場で働く皆さん、認知症のご利用者様対応には苦労されているのではないでしょうか。
危険な行動、睡眠障害…頭では認知症が原因であり、病気だから仕方ないと理解しているのですが、忙しい現場ではどうしても言葉が先行してしまいます。
「認知症対応に正解は無い」と言われることもありますが、僕たちはどこまで認知症のことを理解しているのでしょうか?
どうして認知症が原因で転倒するのか、眠れないのか…言葉で説明できますか?
僕は2012年の第8回試験に合格し「認知症ケア専門士」になりました。
この資格を取得することで学んだこと、評価されたこと、受験のアドバイスなどを書いていきますので、認知症対応に悩む方や受験を検討している方の参考になれば幸いです。
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専門士になって分かった資格のメリット
僕が認知症ケア専門士になって一番「取ってよかった」と感じたのは職場の施設長に「認知症ケア専門士取れたんだ!一発合格はすごいね!」と褒めてもらえたときでした。
認知症ケア専門士は国の介護報酬加算などには関係ない資格なので、介護福祉士やケアマネジャーと比べて知名度はまだまだ低いかもしれません。
しかし2025年に高齢者人口がピークを迎えると言われている今、認知症に関する専門資格ということで日に日に存在感を増しているのも事実です。
事業所にとっても認知症ケア専門士のいる施設・団体に掲載されたり、自社ホームページの職員資格一覧に「認知症ケア専門士」を記載できるメリットがあります。
サービスの利用を検討する一般の人、認知症家族にとって「認知症ケア専門士」という専門資格はとても魅力的みたいです。
このような理由から管理者クラスの人は職員に認知症ケア専門士を取ってほしいと考えているんだとか。
実際、認知症ケア専門士を取ってから転職する際には2社と面接をしていただいたのですが、両方とも資格欄に書いた「認知症ケア専門士」に触れてくれました。
僕が取得した当時は取得者が少なかった影響もあるかもしれませんが、ある施設長は、
「認知症ケア専門士を取られているんですね!珍しい!」
「取るの大変だったんじゃないですか?うちは受けたいと言ってる人すら居ないですよ(笑)」
なんて言ってましたね。
とても難しい資格ではありませんが、認知症のことを専門に勉強できるので「脳血管性」「アルツハイマー」「レビー小体」などの認知症による違いはもちろん、認知症にまつわる周辺症状などに関しても集中して勉強できます。
介護福祉士や社会福祉士などは法律・制度が中心で、認知症に関して詳しいことを勉強できませんからね。
最近ではSOMPOケアネクストが認知症ケア専門士を持つ人に資格手当10,000円/月を出しています。
僕が働いていた施設は出してくれませんでしたが(笑)
今は人材の奪い合いなので、認知症ケア専門士に資格手当を出す企業は増えてくるでしょうね。
認知症ケアを学ぶ機会が豊富。学会誌に大規模研修
最初は「学会がお金稼ぐための資格だ」と言われることもあった認知症ケア専門士ですが、認知症ケア学会は認知症に関する学会誌や研修を高い頻度で発行・開催しており、凄まじい熱意を感じます。
認知症ケア専門士には学会が無料で事例ジャーナルを郵送してくれるのですが、さまざまな施設の事例が掲載されているのでとても参考になりますし、単純に面白いです。
また、認知症ケア専門士は更新が必要な資格で「5年間|30単位」を取得する必要があるのですが、この単位は認知症の研修に参加したり学会誌への事例寄稿などで得ることができます。
研修に関してはもらえる単位数の多い研修に絞れば年1回ぐらいの参加ペースでも資格の更新が可能なので、大きな負担にはなりませんでした。
この辺りは認知症ケア専門士の取得単位確認サイトで調べることができるので、参考にしてください。
同じ場所で同じ人たちと接することの多い介護職にとって、研修参加は刺激が多いです。
思わぬ出会いがありますし、会社によっては「認知症ケア専門士の資格更新に必要」ということで、研修費用を全額負担してくれるところもありますね。
受験対策は過去問(予想問題)がベスト!
認知症ケア専門士の試験は科目合格制を採用しているので「まず2科目だけ合格を目指す」など、柔軟なチャレンジが可能です。
科目合格の有効期間も「5年」と非常に長いので、1年1科目でも大丈夫なほどです。
僕は翌年に介護支援専門員(ケアマネ)の試験があったので、絶対に一発合格してやろうと思って臨みました。
出題はすべて認知症ケア標準テキストの中から出るということだったので、張り切って全部購入したのですが…
めちゃくちゃ読みづらい!!
ほぼ文章だけで、ずら~~っと認知症に関することを網羅するように記載されている本です。
「この中から出題されますよ」と言われても、並の人間が暗記できる量じゃないです(笑)
しかも5冊もあるし、高いし…。
認知症ケア専門士は過去問を公開していないので、ユーキャンなどは過去問集を出していないのですが「予想問題集」「再現過去問集」など試験問題に近いものが発売されています。
そのままの問題が出るわけではありませんが、概ね「こんな感じの試験」ということが分かりますので、受験するなら標準テキストより重要です。
実際に一発合格した僕の意見としては、標準テキストは必要ないです。
今は認知症ケア専門士のeラーニングが登場しているので、確実に合格したいなら標準テキストを頑張って読むよりeラーニングで勉強したほうが良いです。
不合格になっても科目合格は無駄になりませんので、一発合格してやる!!という気合を入れた人以外は過去問(予想問題)だけで十分だと思います。
認知症ケア専門士の概要
※公式サイトより引用
認知症ケア専門士試験を受けるには「過去10年に実務経験3年以上」という制限があります。
受験資格には「認知症ケアに携わった者」と記載されていますが、受験者一人ひとりの勤務体制をチェックするのは不可能ですから、介護・医療の仕事であればたとえ認知症利用者が居なかったり、認知症病棟でなくても大丈夫です。
実習、ボランティアなどは含まれないので注意しましょう。
この辺りは受験に必要な「受験の手引」に詳しく記載されていますが、不安な人は電話などで確認してくださいね。
1次試験は科目ごとの採点で「正答率70%以上」が合格ラインです。
2次試験は集団面接みたいなものです。後述しますがよっぽど変なことをしない限り、2次で落ちることはないと言われています。
受験、更新にかかる費用・単位は?
これに加えて資格の更新には30単位が必要で、単位は研修参加によって得られます。
大きな研修であれば一回の参加で10単位近く得られることもあるのですが、参加費も相応です。
体感でざっくり1単位あたり1,500円、5年で30単位取得するのに45,000円ぐらいですかね。
こうして見ると取得・維持には結構お金のかかる資格ですね…。
この辺り会社が負担してくれるかどうかが重要なので、事前に確認しておくことをオススメします。
受験難易度は決して高くない。合格率50%以上
認知症ケア専門士の合格率は近年、50%を大きく上回っています。
個人的な感想としては介護福祉士より難しいけど、介護支援専門員ほどではないです。
しっかり過去問を繰り返せば4科目全滅ということはまず無いと思います。
1科目でも取れば翌年以降そこを勉強しなくても良いので、どんどん楽になっていきますね。
ただ、4科目を受けると1科目1時間、昼休憩時間を挟んで朝から夕方まで試験になります。
当日は気が張っているので集中力は大丈夫かもしれませんが、さすがに疲れるので食事・水分補給はしっかりしましょうね!
2次試験の論述、ディスカッションって何?
僕が受験した当時は2次試験の情報が全然なくて、1次試験合格後は不安で仕方ありませんでした。
「論述」というのは口頭ではなく文章で、一次試験合格者には概要が郵送されてくるのでそれに沿って「認知症事例に対する論文を提出する」ことです。
考える時間もありますし、自宅でゆっくり回答できるので1次試験を合格した方なら心配しなくても大丈夫です。
論文と言ってもそんなに長い文章は要求されないので安心してください。
最後に「面接(ディスカッション)」を2次試験会場で自分を含めた1組6人同時に行われます。
6人による個別スピーチ(1分)+ディスカッション(6人の話し合い)で合計20分なので、あっという間に終わってしまいます。
個別スピーチというのも「感想」だとか「意見」みたいなものなので、よっぽど反社会的なことを言わなければ問題ないでしょう。
僕の周りや同じグループの人も2次試験で落ちるというのは聞いたことがないらしいので、あんまり身構えなくても大丈夫ですよ!
上級認知症ケア専門士を取る意味はある?
※公式サイトより引用
認知症ケア専門士には「上級」と呼ばれる上位資格があります。
試験の難易度が非常に高く、受験資格も「認知症ケア専門士として3年以上」「学会での発表、機関紙等への論文・事例掲載」など、ハードルがめちゃくちゃ上がります。
試験自体は筆記のみなので勉強好きな人が目標にする分には良いかもしれませんが、ケアマネや認定介護福祉士などを取っていない人は優先度を考えましょう。
ケアマネや認定介護福祉士のほうが転職や給料に直接反映されますからね。
ちなみに2017年の上級認知症ケア専門士合格者は「107名」だそうです。
認知症ケア准専門士が登場。受験資格は?
※公式サイトより引用
2018年より「認知症ケア准専門士」という資格も登場しました。
上級とは逆で、認知症ケア専門士の下位資格となります。
受験資格が「認知症ケアの実務経験」がない者とされていますが、公式サイトによるとこれは「認知症ケアの実務経験が3年未満」指すそうです。
認知症ケア専門士を受けたいけど、実務経験が足りない人や認知症に興味がある学生向けの資格と言えますね。
出題範囲、合格ライン70%以上など試験概要は認知症ケア専門士とあまり変わらないのですが、2次試験はありません。
認知症ケア准専門士を取得すれば、認知症ケア専門士の1次試験を免除されます。
認知症ケア専門士の資格取得を目指す人で、実務経験3年未満の人は受験を検討されてはいかがでしょうか?
詳しくは認知症ケア准専門士の公式サイトをご覧ください。
まとめ|認知症ケア専門士は転職にも有利!
認知症ケア専門士を取得する労力、費用は結構なものがあります。
しかし、僕は転職の際に認知症ケア専門士の資格を評価していただいて、基本給を少し上げてもらいました。
そのときは「うちは認知症ケア専門士の資格手当がないから」という理由でしたが、今は認知症ケア専門士の資格手当が出るところも多いですね。
介護求人ナビの求人検索で「認知症ケア専門士」と入力すれば資格手当を出している求人を見られますが、僕が取得した2012年より確実に増えています。
僕のように介護福祉士を取得してから介護支援専門員を受けるまで間が空く人にはオススメできる資格です。
認知症に対する理解も深まりますし、今後注目されていく資格なのは明らかです。
僕が転職で年収アップをした事例については、別記事でかなり具体的に書いたので読んでみて下さい。
もし「近くに認知症ケア専門士を評価してくれるようなところがない」という方は介護エージェントに相談してみてはいかがでしょうか?
担当者が所持資格を企業にアピールしてくれるので、普通に応募するより条件が良くなるかもしれませんよ!
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最後まで読んでいただきありがとうございました。
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